家族の希望もあって、津別峠の雲海を見に行ってきました、近頃話題の。
実は前から気になっていたことが。
・・・はたしてこれは「雲海」なのか?
私みたいに生半可に気象をかじっているレベルの人には通じると思う、あるはがゆさがあって。
「雲」の定義って、地面に接していないのが条件ってことになっていて、接していると「霧」なのね。
おそらくあの辺で、あの展望台の高さから見える場合「霧」であることが多いはずで(理由は後ほど)。実際にたどり着くまでの道中も、屈斜路湖畔の道も、湖の上も霧だった。
それでも上からみたら、「雲海」といっていいのかなぁ?つまり、かなり高い山や飛行機から見下ろしたときの雲海とは別物っぽいけど、どうよ?という疑問・・・。
近くにある摩周湖の名物は「滝霧」なのにこっちは雲でいいの?とかさ。・・・
というわけで、今日は長くなりますが「雲海」の定義をまとめてみます。
まず例によって気象庁の観測項目に無いことは明らかなので、一般用語としての雲海から。
うちにある広辞苑より。
- 雲がはるかに横たわっている海原。
- 山頂・飛行機などから見下ろした時に海のように見える雲。
新明解国語辞典だと?
(高山・航空機などから見下ろして)一面に海のように広がって見える雲。
広辞苑の1.はちょっとめずらしい定義かも。まあ一般的には2番だろう。やはり、空に浮かんでいる雲を上から見る、というイメージどおり、山頂・高山・飛行機、という言葉が並んでいるが、「海のように見える」に重点があるかもしれず、私の疑問が解消できるほどは断言されてはいない。
では気象関係の本ではどうか。
家にある本をざっとみて一番詳しく定義していたのが、武田康男さん「楽しい気象観察図鑑」。
「山に登っていつもとちがう雲を見てみよう」の章にこんな記述が。
ふだん見上げている雲を、山から見下ろしたらどんなふうに見えるでしょうか。1500mを超えるような高さの山に登ったときに見える、海のように広がる雲を雲海といいます。
(中略)
また、数百m程度の丘や山からも、盆地や低地に広がる霧や層雲が、雲海のように見えることがあります。
さすが言い切った!というか、やはり雲の定義・気象学的分類を意識した書き方になっている。
この定義だと、津別峠展望台947mはもちろん、かの雲海仙人が住まわれる憧れのトマムリゾート「雲海テラス」1088mでさえ、「雲海」ではなく、「雲海のように見える」・・・擬似雲海・・・?!となってしまう。
あと「日本のマチュピチュ」とまで呼ばれる、兵庫県の竹田城。こちらも「雲海」に浮かぶことで有名になったのだが、353mなんだって。バッサリですな。
1500m、の出典があるのかまでは調べていないけど、おそらく下層雲が2000mくらいまでの高さに存在するものなので、平均的な雲頂高度を取ったのかな?
やはり気象学的には雲海といえないのか・・・?と思った矢先、他の本で、目からウロコが落ちた別の記述を見つけた。昨年お勉強に使わせてもらった、菅井貴子さんの「北海道お天気ごよみ365日」「雲海仙人」の章。
高い山や飛行機からは、「雲海」が見られることがあります。気象学的には「霧」です。霧を高い山から見下ろすと、雲の海のように見えます。
むむ。飛行機から見えるのは「霧」じゃないことが多い気がするので、ちょっと混乱を招く文章ではあるが、そこには目をつぶって・・・
ズバリトマムの雲海テラスのことを書いているので、「雲海テラスの雲海は気象学的には霧ですよ。」と言いたいのではないか。つまり、「気象学的には霧だけど、それがなにか?」と。
まあそういうスタンスもあるよね、っていうかいいよね。っていうか、きっとみんなそこで落ち着いてるんだろう。と腑に落ちた。
さてまとめてみよう。
津別峠の「雲海」は雲海か?
気象学的は雲ではなく霧を上から見たもの、だが、「雲海」は一般用語の側面が強いため、雲海と言ってもいいだろう。もっと高いところで見られる雲海とは別種のものではあるが、一々区別しなくても問題はなさそう。
いやいやべつに、せっかく有名になってきた津別峠に水を差そう、ってんじゃないんです。(まああっという間に観光的に開発できちゃったバイタリティがうらやましくないかといえばないこともないようなきがしないでもないですはい)
幻想的で、その場所だけでしか体験できない、忘れられない光景なのは間違いないし。
ただ、センスのある子どもとかが、「地面についてたから雲じゃないんじゃないの?」と素朴な疑問を大人にたずねたときに「雲じゃなくても雲海なの!」などと乱暴な答え方をしないでほしいだけです。子どもじゃなくても大人相手でもね・・・
これくらい軽くネチネチ、考えてくれている人がいるといいなぁ、よその事ながら。
また、発生原因については、ある程度調べたりお勉強なさってほしいものだとは思う。
(見に行ったとき、展望台の3階でツアー客向けの解説をガイドさんがしていたようで、内容が気になって気になって仕方なかったのだが・・・よく聞こえなくて残念)
発生原因は複数あると思うのだ。私が行った日は、前日から湿度も高く、夜間にもそれほど気温が下がらず、ふもとで見た霧の流れ方から言っても、おそらく釧路のほうから流れてきて屈斜路湖周辺にたまった移流霧だと思う。当日の釧路の湿度は100%で霧が出ていたと思われるし。釧路の夏の霧日数の多さを考えるとこのパターンが一番多いように思う。
あとは放射冷却で出来る場合もあるはず。低気圧性とか、ほかにもあるだろう。
トマムの雲海テラスでは、北大のセンセイたちも関わってることもあり、しっかり6種類に分類されている。「雲海テラス トマムに現れる代表的な雲海」
おそらく観測さえ続ければ、大体分類できると思うのでがんばってほしい。(てかもう発表されてるのか、何も調べてないで言ってるんだが)
後日、調子に乗って、知床峠の「雲海」も見に行ってきた。こちらはまさに海の上に広がるほうの雲海が見えた。北方領土の山々が島のように。こちらもいろんなパターンあるんだろうな。(あえてトリミングしないままのせてます)